ドイツの食品ロス・廃棄物
レポーター: 田口理穂 さん (2021年執筆)
食べ物を無駄にする食品ロス・廃棄物は、世界でも大きな問題になっています。
FAOによると、世界では毎年40億トンの食料がつくられていますが、その3分の1にあたる13億トンが捨てられているといわれています。
それはドイツも同じです。
FAO(国連食糧農業機関)
国連の専門機関の1つで、世界で食べ物がなくて苦しんでいる国や地域を助ける仕事をしています。
FAOはFood and Agriculture Organization of the United Nations の略称です。
⇒FAOのWEBサイトはこちら【外部リンク】
世界でつくられている食料の3分の1が捨てられている!
世界では食品ロス・廃棄物という言葉なんだね。
日本では食品ロスというよ。何がちがうのかな?
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どうして食べ物がごみになるの?
食べ物が捨てられる理由は、いろいろあります。
例えば、賞味期限が切れてお店で売ることができなくなったもの、同じ時期にたくさんとれすぎた野菜、お店に運んでくる時に保存に失敗して腐ってしまうもの、形が規格外であるため店頭に並べられないもの、レストランの食べ残しなど、さまざまな食品ロス・廃棄物があります。
賞味期限ってどんな意味?
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農林水産省
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どこから、どのくらいの量の食べ物のごみが?
ドイツでは、
1年間に1,200万 t (2015年)※1の食べ物が廃棄されます。
※1:ドイツ連邦食料・農業省(BMEL)WEBサイト(2021年8月2日に利用)
どんなところで、食べ物がごみになっているの?
下のグラフで調べてみましょう。
ドイツで食品ロス・廃棄物が出ているところ(2015年)
出典:ドイツ連邦食料・農業省(BMEL)WEBサイトよりJEMAI作成(2021年8月2日に利用)
例えば、農業や漁業など食料を生産する時、食べ物を加工する時、スーパーやお店、レストランや会社の食堂、家庭がありますね。
では、一番多く出しているのはどんなところでしょうか?
ドイツでは家庭から多くのごみが出ているよ。
1人当たりにするとどのくらいの量かな?
ドイツ人1人当たり 家庭から1年間に 約75 kg(2019年)※1の食べ物を廃棄しているそうです。
※1:ドイツ連邦食料・農業省(BMEL)WEBサイト(2021年8月2日に利用)
家庭からどんな食べ物が廃棄されているの?
下のグラフで調べてみましょう。
このグラフは2017年のドイツの家庭から出る食品ロス・廃棄物の内訳です。
ドイツの家庭から出る食品ロス・廃棄物の内訳(2017年)
出典:ドイツ連邦食料・農業省(BMEL)WEBサイトよりJEMAI作成(2021年8月2日に利用)
調理済み以外のものがたくさんあるよ。どうして?
食べ物をごみにしないための取り組みは?
ドイツではフランスのように食品ロス・廃棄物を禁止する法律がないため、お店や個人の自主的な取り組みに頼っています。
例えば近所のパン屋さんに入ると、閉店ちかくになってもパンが山積みされています。黒パンなどは2日間売ることもありますが、通常は早朝に焼いたパンだけを並べます。「いつでもお客さんにたくさんの商品の中から選んでもらおう!」という考えが、作り過ぎをまねいています。
売れ残ったピザやパン
量り売りの八百屋で、古くなった野菜がよけられている
SDGsと食品ロス・廃棄物
世界ではたくさんの人が飢えているといわれます。
SDGsは17の目標をかかげており、その1つに「2030年までに小売・消費レベルにおける世界全体の一人当たりの食品廃棄物を半減させ、収穫後損失などの生産・サプライチェーンにおける食品の損失を減少させる」とあります。
どういうこと?
どのくらいの人が飢えているの?
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食べ物のアレルギーもあるよね。
色んな人の立場で考えていくにはどうしたらいいかな?
ドイツでは多くの人に知ってもらうために、 SDGsと食についてのイベントが開かれています。
子どもたちも多く参加していますよ。
地球温暖化対策や食についてのイベント
子どもが参加できるんだ!
大人と話し合っているね。
学校でも大人と話し合うチャンスがあるのかな?
例えば北ドイツの中学校の2年生全員(120人)で、「ひとつの世界」をテーマにしながらSDGsについて学ぶワークショップを丸1日かけて行いました。
「私たちが言いたいこと」をモットーに「持続可能な食」「持続可能な消費」「平等推進と差別反対」など11グループに分かれて、ポスターや映像をつくり、詩や手紙を書きました。
各グループには、NGOなど外部からの専門家がサポートしていました。
また州の文部大臣も参加して、生徒たちと一緒に議論しました。
参加した生徒からは、このような意見が出ました。
クリスマスに、季節外れのイチゴが必要なの?
地元産でオーガニックのものを買う。
プラスチックの使用をなるべく減らす。
平和、環境保護、平等などSDGsは重要だと思う。
みんな良い未来を持つ権利がある。私たちの後の世代も。
私の息子も参加しました。
息子は「持続可能な消費」に参加し、新しい学びがたくさんあってよかったといっていました。
自分の考えをまとめて、伝える方法もトレーニングできそうだなぁ。
夜、道を歩いていて「パン、いりませんか」と、声をかけられたことがあります。
振り返ると、白パンや菓子パンがたくさん入った大きなカゴを手にした若者たちがこう言いました。
「近所のパン屋さんから余ったのをもらってきて、みんなに分けています」
私は三つ編み型の甘いパンと、ゴマのついたパンをもらいました。
もらった私はとてもうれしかったし、パンをくれた若者たちもニコニコしていました。
一人ひとりが、こうしてできることから始めればいいのだと感じました。
みんなでおいしく、そして残さず食べよう