ごみの出し方、集め方
レポーター: 伊藤航太郎 くん (2016年執筆)
誰がごみのルールを決めているの?
シンガポールのごみのルールは、国の機関であるNEA(National Environment Agency:国家環境庁)が決めています。
1.こんな問題があるよ
シンガポールの1日に出るごみの量は、1970年は1日1,260トンだったのが、2014年には1日8,338トンへと、
約6倍に増えています。このため、東京23区位しかない、小さな国土でいかにごみを処理するかが大きな問題です。
2.こんな対策をしているよ
①NEAはごみ焼却施設でごみを燃やして、ごみの体積を90%へらし、残った焼却灰をシンガポールの沖合30キロにある、セマカウ島に埋め立てています。
②NEAはシンガポールの環境の保全と改善を担当している政府の組織です。NEAは環境問題に関する多くの仕事があります。そのうちの一つがリサイクルの推進や、ごみの減量です。
例えばこんなことです。
個人向け
- お店では食べられる量以上の注文をしない
- おうちでは料理できる量以上の買い物をしない
- 残りものは冷蔵庫に保存して無駄にせず食べる など
ごみは有料?
有料です。
ごみ出しの料金は住居の種類の違いで、3つあります。
1.HDB (日本の公団住宅のようなもの。国民の80%が住んでいる。)
2.コンドミニアム (日本のマンションのようなもの。)
3.一軒家
※金額は全て平成25年シンガポールドル平均レートで換算した金額
料金は、Singapore Powerという会社に、ごみ処理代を電気代、ガス代、水道代といっしょに支払います。
ごみは分別しているの?
「一般ごみ」と「リサイクルごみ」に分別しています。
それ以外の「粗大ごみ」、「庭の木や草や土などのごみ」はごみが出た時に民間のごみ収集業者に連絡を取り、集収をお願いします。
「リサイクルごみ」は、次の4種類です。
- ガラスびん
- 紙
- プラスチック
- 缶
「ごみの分別ルールを分かりやすく伝える工夫」もいろいろありますよ。
①国(NEA)がつくっているリサイクルごみの分別ルールシール
写真提供:シンガポール国家環境庁(National Environment Agency)
(Photograph courtesy of National Environment Agency, Singapore)
このシールは、下の写真のように大きなごみ箱にはって使います。
ガラス、紙、プラスチック、缶の4種類の「リサイクルごみ」は、日本のように種類ごとに分けて、ごみを出す必要がありません。シンガポールではこの4種類をまとめて1つのごみ箱にごみ出しをします。そこで、目印に、このシールをはっています。
写真提供:North West Community Development Council
(Photograph courtesy of North West Community Development Council, Singapore)
③大学の中にある電子機器専用のごみ箱
イヤホンや、パソコンなど、どんな電子機器を入れることができるか、イラストで分かりやすく伝えています。
④僕の住んでいるコンドミニアムのごみ置き場
ごみ出しの時、専用のごみ袋はあるの?
今のところ、専用のごみ袋はなく、各家庭のダストシュートやごみ箱にごみ出しします。
ごみ出しの場所はどこ?
ごみの出し方をみてみましょう。
1.HDB
ごみシュート
「一般ごみ」を捨てる方法は大きく2つあります。
(1) それぞれの家庭にごみシュートがある場合(1989年以前の建物)
各ごみシュートごとにあるごみ箱を取り出しているところ
写真提供:シンガポール国家環境庁(National Environment Agency)
(Photograph courtesy of National Environment Agency, Singapore)
住んでいる人は、自分の家の中にあるごみシュートのふたを開いてごみを入れます。
ごみを入れると、ごみは建物の下にあるごみ箱にストンと落ちていきます。各ごみシュートごとにあるごみ箱を、上の写真のように、人の力で取り出し、ごみ集積所まで運びます。運ばれたごみはごみ収集車が集め、焼却場へ運びます。
暑い国なので、人がごみ集積場に運ぶ間にごみはすぐ腐り、臭いも衛生面でも良くありません。また、沢山のごみを運ぶために、人を雇うお金も沢山になる問題があります。
(2) それぞれの家庭ではなく、各階共同シュートがある場合(1989年以降)
住んでいる人は各階にある共同シュートまでごみを運び、共同シュートのふたを開いてごみを入れます。ごみは下にあるごみ収集車専用のごみ箱にストンと落ちていきます。各建物の共同シュートの下にあるごみ箱はごみ収集車が箱ごと回収し、焼却場へ運びます。
そのため、(1)のように、人がごみ収集場に運ぶ作業によって生じる問題がなくなりました。
(3) 新しい挑戦
最近では、新しいシステムへの挑戦も行われています。
シュートから落ちてきたごみは、空気の力で吸い取られ、地下に埋め込まれたパイプを通って、自動的にごみ集積所まで運ばれます(「バキュームごみ集収システム(PWCS)」といいます)。
このシステムは現在のところHDBよりもコンドミニアムで多く採用されています。
バキュームごみ集収システム(PWCS)
写真提供:シンガポール住宅開発庁(HOUSING & DEVELOPMENT BOARD)
(Photograph courtesy of Housing & Development Board, Singapore)
2.コンドミニアム
コンドミニアムのごみ出しの方法もHDBでご紹介した(1)~(3)の方法と同じです。
ここでは1.HDBの(3)でご紹介した新しい技術について、僕の住んでいるコンドミニアムのPWCSを例に説明します。
僕の住んでいるコンドミニアムのPWCSの例
ごみシュート |
①「一般ごみ」は、各家庭の室内にあるごみシュートに入れます。 |
バキュームパイプ1
バキュームパイプ2 |
②最近建てられたコンドミニアムのほんの一部では、ごみシュートに出されたごみは、空気の力で吸い取られ、バキュームパイプの中を通って、自動的に敷地内のごみ集積場へ集められているところもあります。バキュームごみ集収システム(PWCS)とよばれています。
(僕が住んでいるコンドミニアムでは、空気の力で吸い取るバキュームは、1日10回行われ、スケジュールは住人に知らされています。このときは、シューっという音がごみシュートからします。) |
ごみ集積場 |
④ごみはバキュームパイプを通って、集積場の大きなごみ箱に入ります。
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民間のごみ収集業者が ごみ箱ごと回収
ごみ焼却場へ出発! |
⑤大きなごみ箱は、民間のごみ収集業者が箱ごと集収し、焼却場へ運びます。 |
空の箱でもどってきたよ |
⑦約1時間ほどで空になった箱をもどしに帰ってきます。 |
この空気の力を利用した「バキュームごみ集収システム」は、
- 暑い国でごみがすぐに腐ることを防ぐ
- 衛生的によい
- 労働力がさくげんできる、効率がよい
ことなどの理由で、将来もっと広がることが期待されています。
しかし、まだまだコンドミニアムの一部にしかこのシステムはありません。
3.一軒家
ごみ収集業者が各家の住所を書いたごみ箱 を各家の前に置きます。
「一般ごみ」、「リサイクルごみ」の2つのごみ箱があり、そこにごみを出します。
一軒家のごみ箱1(21は住所の番号)
一軒家のごみ箱2
(ごみ箱は、各家の外に設置されている)