●産業機械の環境配慮設計に関する動向
現在、環境配慮設計に関する国際規格のテクニカルレポート(ISO TR 14062)の各産業界への落とし込みなど、機械装置全体の環境配慮設計の取組みが動き出しつつあります。また、LCAやリサイクル・システムの構築など、様々な取組みが複数の産業機械業界にて進められていますが、産業機械全体を見渡した場合、特に取組みを行っていない業界も多く、取組み度合いに格差があります。そこで、産業機械全体の取組みの底上げを図るため、多種多様な品目に共通する切り口として、3R、特にリサイクルに焦点を当てています。
●産業機械の静脈物流の現況と課題
産業機械の主要素材である鉄を中心に、産業機械の静脈物流の現況と課題を把握した結果、我が国の鉄スクラップ(老廃屑)に対する産業機械の割合は約14%と自動車に次いで多く、産業機械が鉄の静脈物流に大きな位置を占めることが確認されました。
一方、鉄リサイクル業者や電炉メーカーでは産業機械の解体時のオイルの流出や再生時の銅・レアメタルの混入など、分解性や適正処理の上での課題があることがあげられます。さらに、昨今では中国等のアジア諸国に、分解されないまま雑品と |
|
して輸出されることも多くなっており産業機械に使用された鉄は高級スクラップが主体だが、輸出増により国内のスクラップの低品質化や分解技術の低下など、国内鉄リサイクル業界に構造的な変化を与えつつあります。
また、産業機械の製造・流通・販売から廃棄に至るルートについて、ヒアリング調査をもとに整理し、多種多様なルートの特性に応じたユーザー・販売店・ディーラー・処理業者等の関係者との情報共有が必要であることが分かりました。
●3R推進に向けた取組課題
短期的には、まず産業機械業界全体の情報共有化、共通認識づくりを進めると共に、解体容易性を向上させるためのラベリングの実施など、現在取組みを行っていない業界が着手容易と思われる取組みを進め、全体の底上げを図る必要があります。
また、中長期的には、産業機械としての国際静脈物流に対する基本的な考え方を検討していくと共に、使用済み産業機械の物流把握のための情報基盤の整備(トレーサビリティの向上)や、産業機械の環境配慮設計に関する規格化などを、各品目の特性に応じて進めていくことが望ましいと考えられます。 |