| 1. 調査研究の目的 | |
わが国の一般廃棄物(ごみ)の最終処分量は、中間処理やリサイクルの進展などにより、毎年、減少しています。しかし、その内訳をみると、直接最終処分量は確実に減少していますが、ごみ焼却灰(焼却残渣)の最終処分量は微減傾向に止まり、一般廃棄物(ごみ)の最終処分量全体の70%を占める状況となっています(図1)。したがって、わが国の一般廃棄物(ごみ)の最終処分量の削減の課題は、ごみ焼却灰をいかにリサイクルするかということに焦点が絞られているとも言えます。
行政もまたこのような認識のもとで、ごみ焼却灰を溶融しスラグ化することによりごみ焼却灰のリサイクルを行うことを推進してきましたが、実際には、生産されたスラグのリサイクルが進まないなどの課題を抱えている自治体も多く存在します。
ごみ焼却灰の抱えるこうした問題の解決を目指して、平成19年度に「民間施設を活用したごみ焼却灰のリサイクルに関する調査研究」を実施し、ごみ焼却灰の有効利用を促進する民間施設の概要及び促進シナリオを提示しました。
本調査研究は、これに地球温暖化対策及び焼却灰のライフサイクル管理の視点を盛り込みさらに深化させることで、民間施設の有する特質を活かしたより有益な「ごみ焼却灰有効利用促進のシナリオ」を提示するものです。
図1 ごみの最終処分量の推移 |
| 2. 調査研究結果(概要) | |
2.1 ごみ焼却灰リサイクル工程別の温室効果ガス排出量の算出・比較分析
自治体や民間企業で実際に採用されているごみ焼却灰のリサイクル工程と埋立処分等とを組み合わせて複数の二酸化炭素排出量算出モデルを設定して二酸化炭素排出量を算出し、比較分析を行いました。算出モデル別の二酸化炭素排出量の算出結果は図2のとおりです。
図2 リサイクル工程別(モデル)二酸化炭素排出量のまとめ |
2.2 ごみ焼却灰有効利用促進のシナリオ
その1 資源循環に温暖化防止対策、安全性を加え、トータルな視点で焼却灰有効利用を促進する。
従来の資源循環システムは、「最終処分」から「資源の有効利用」への転換に主眼が置かれ、再資源化工程における温室効果ガスの発生にはあまり注意が払われてこなかった。また、安全性の確保については再生利用時のトレーサビリティについても留意する必要がある。今後は従来の資源循環の方向性にこれらの視点を加えてトータルな視点で焼却灰有効利用を促進していくことが求められる。 | |
その2 民間有効利用施設の利用を拡大する。
民間施設の利用を拡大すべき理由
■二酸化炭素の排出量が少ない。
■広範囲に焼却灰の原料としての調達が可能であり、また、稼働率が高く専門的な技術・ノウハウを有しているなどから、民間は自治体に比較してコストが安い。
■セメント化の場合、リサイクル製品であるセメントは一般のポルトランドセメントとして広く流通可能である。
■民間の灰溶融・焼成事業者は、砕石・再生骨材製造事業者等の既存の骨材供給事業者と一体となった取組みを行っている。
■民間は溶融スラグの冷却方法に徐冷方式を採用するなど利用を重視した工程を有している。
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その3 民間有効利用施設の受入能力を拡大する。
市町村において民間の有効利用施設を利用する機運が高まりつつある中で、民間利用施設の現在の受入能力は市町村の焼却灰の発生量に対して低いレベルにあり、今後民間の受入能力を高めていく必要がある(図3)。
図3 ごみ焼却灰の民間有効利用施設の全国所在地(平成22年3月現在) |
2.3 民間有効利用施設を利用する上での留意事項
民間有効利用施設を利用する際には、安全性(リスク)、リサイクル品の品質・用途・市場性、温暖化対策、コストの観点から総合的に判断することがもとめられるが、これらの要因はトレードオフの関係になっていることに留意する必要がある(表1)。温室効果ガスについては今後重要な要因となってくると考えられる。
表1 民間有効利用施設(民間)に係る留意事項(トレードオフ)のまとめ
項目 | セメント化 | 焼成 | 溶融 (民間) | cf.溶融 (自治体) |
安全性(リスク) | ◎ | △ | ◎ | ○ |
受入制約・弾力性 | ○ | ○ | ◎ | - |
リサイクル品の品質・用途・市場性 | ◎ | △ | ○ | △ |
受入箇所・受入能力 | ○ | △ | △ | - |
温室効果ガス排出量 | ◎ | ○ | △ | ×~△ |
コスト | ○ | ◎ | △ | ×~△ |
※◎、○、△、×は留意事項のトレードオフの関係がわかるよう付与した相対的なものである。。
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