| 1. 調査研究の背景と目的 | |
レアメタルは製品中の含有量が少量であることが多いものの、重要な機能を担う部品に様々な特性を与える成分として欠くことができない資源であり、わが国の製品・産業競争力を支える重要な資源である。しかし、その産出が特定の国に偏在しているために、戦略的な対応が求められる資源であり、わが国の資源戦略上、重要な課題となっている。
従来、レアメタルのリサイクルは、製品中の含有量が少量であることが多い故にその製造工程で発生する工程くずを対象としていることが多く、使用済製品中のレアメタルのリサイクルは、資源価格の高い貴金属(金、銀、白金など)、あるいはリサイクルが法律で定められている小型二次電池中のレアメタルの一部(ニッケル、カドミウム、コバルトなど)を対象として行われているにすぎない。
このような状況を踏まえ、レアメタルを使用している製品(部品)の中から以下の理由によりネオジム磁石を選定し、それを部品として使用している製品のうち既に法律等により回収・リサイクルが実施されている製品を対象として、ネオジム磁石の回収・リサイクルシステムについて調査研究した。
【ネオジム磁石選定の理由】
- ■ネオジム磁石は競争力の高い製品を生み出していること
- ■ネオジム磁石は様々な分野で使用されていること
- ■ネオジム磁石中のレアメタル(ネオジム、ジスプロシウム)の含有量が多く(図1)、そのリサイクル事業の経済性が高いと想定されること
- ■工程くずのリサイクルシステムが確立されており、使用済製品から磁石のみを取り出すことができれば、工程くずリサイクルシステムを利用することが可能であること
【調査研究の対象製品】
- ■パーソナルコンピュータ用ハードディスク
- ■家電製品(エアコン、電気洗濯機)
- ■携帯電話・PHS
- ■ハイブリッド型自動車
- ■MRI
図1 ネオジム磁石の組成例 |
ネオジム磁石は永久磁石の中で最も強力な磁石であり、パーソナルコンピュータ用ハードディスクやハイブリッド型自動車用モータなどに欠くことのできない先端的な部品である。
しかし、希土類の産出は特定の国、特にジスプロシウムは中国に偏在しており、さらに中国は希土類の輸出を許可制として、輸出許可量を減らしてきているなど資源確保に不安が生じている。このようにネオジム、ジスプロシウムは戦略的な対応が求められる資源であり、わが国の資源戦略上、重要な課題となっている。
一方、ネオジム磁石の成分は図1に示したとおり、レアアースのネオジム(約25%)、ジスプロシウム(約4%)を多量に含有しているので、たとえば既存のパーソナルコンピュータの再資源化施設などにおいてハードディスクに使用されているネオジム磁石を分離・選別すれば、比較的経済的にこれらを再資源化できると考えられる(図2)。
さらに、ネオジム磁石の製造工程で発生する工程くず(研磨粉末、固形くず)のリサイクルはすでに実施されているので(図3)、使用済製品からネオジム磁石を分離・選別すれば、既存の工程くずの再生技術や再生プロセスを活用してリサイクルできる可能性は高い。以上のことから、使用済製品からネオジム磁石を分離・選別し、その主成分であるネオジム、ジスプロシウムを日本国内で再生する回収・リサイクルシステムを日本国内に整備することは極めて重要と考え、その課題、対応策を検討した。
図2 ハードディスクに使用されているネオジム磁石 |
| 2. 調査研究結果のあらまし | |
(1)永久磁石の中で最も強力なネオジム磁石を使用することで、モータなどの効率を改善し、モータなど使用製品の小型化、省エネ化、高性能化を実現できる。環境問題の重要性の高まり、製品の小型化などのニーズを背景として、ネオジム磁石を使用する製品は今後とも増加し、ネオジム磁石の需要も増大すると考えられる。
(2)しかし、産業技術総合研究所の検討によると、ネオジム、ジスプロシウムの生産量はこれらを含む希土類の全体需要に制約を受けてネオジム、ジスプロシウムのみを増産することができないなどの理由により、2013年には需要量の約70~90%しか供給されないと試算されている(現下の世界的な経済の混乱の影響は考慮していない)。また、ネオジム磁石の原料であるネオジム、特にジスプロシウムを含む希土類鉱石の産出は中国に偏在し、その供給は特定の国家の政策に左右されやすい懸念を抱えている。これらの対応策として、使用済製品からネオジム磁石を取り出し、ネオジム磁石からネオジム、ジスプロシウムを再生する回収・リサイクルシステムを資源戦略として日本国内に確立することは極めて重要と考えられる。
(3)ネオジム磁石の製造工程で発生する工程くずのリサイクルはすでに実施されている(図3)。しかし、日本国内に希土類金属精製施設などネオジム磁石再生のための施設が存在しているにもかかわらず、再生に伴い発生する廃酸、残渣などの国内での処理費が高いなど処理コストの理由により、工程くずは一社※を除いて中国に輸出され、再生されている。したがって、ネオジム磁石を日本国内で再生するためには経済性の課題を解決する必要がある。
※この一社は、国内で再生して欲しいという顧客ニーズに対応し、また将来のビジネス展開の可能性を考慮して、国内で再生しているが、経済的な課題は抱えているとのこと。
図3 ネオジム磁石研削粉末、固形くずの再生フロー |
(4)一方、使用済製品に含まれるネオジム磁石は現在、回収・リサイクルされておらず、鉄スクラップの中に混在して流通していると推察される。しかし、ネオジム磁石が使用されている製品の多くは、パーソナルコンピュータ、エアコンなど、すでにリサイクル法などによって回収体制が整備されている。さらに、回収された使用済製品の解体・分離・選別施設においては、ネオジム磁石を使用している部品レベルまで分離・選別されている。安全面で要求される消磁などの課題はあるものの、ここで若干の作業を追加すれば、ネオジム磁石のみを取り出すことは可能と考えられる。
(5)しかし、現在のところ家電リサイクルプラント、パソコン再資源化センターなど使用済製品の解体・分離・選別施設においては、使用済製品からネオジム磁石を分離・選別しても、十分な価格で売却できないなど経済的な理由により、ネオジム磁石は分離・選別されていない。したがって、使用済製品からのネオジム磁石の分離・選別を推進するためには経済性の課題を解決する必要がある。
(6)また、ネオジム磁石を使用済製品から取り出す際、エアコンやハイブリッド型自動車のように、ネオジム磁石がモータに埋め込まれている場合やM R Iのように大きなネオジム磁石が使用されている場合には、ネオジム磁石を取り出すためならびに作業安全のために解体・分離・選別段階で消磁を行う必要があり、効率的な消磁技術の開発が必要など新たな技術開発課題もある。
(7)使用済製品からのネオジム磁石の回収・リサイクルシステムの構築に向けて次のことが必要である。
■使用済製品からネオジム磁石を分離・選別し、それを日本国内で再生してネオジム、ジスプロシウムを生産することはこれらの供給リスクを緩和することとなり、わが国の資源戦略として重要なので、当面の経済性にとらわれず中長期的な観点からの推進が必要である。
■既存の使用済製品の回収・リサイクル関係者に加え、ネオジム、ジスプロシウム再生技術・施設を保有する合金製造事業者、磁石製造事業者が参加し具体的な回収・リサイクルシステムづくりを進める必要がある(図4)。
■使用済製品の解体・分離・選別工程におけるネオジム磁石の消磁は、作業安全の確保、作業効率の向上の観点から必要であり、効率的な消磁技術の開発が必要である。また、日本国内におけるネオジム磁石再生の経済性の確保のために、多量の廃酸、水酸化鉄などを発生させない再生技術の開発が必要である。
■使用済製品からネオジム磁石を分離・選別し、それを再生してネオジム、ジスプロシウムを生産するシステムは、現在のところ経済性の課題を抱えているので、その実現に向け、国は、回収・リサイクルシステムの構築、技術開発に関して積極的に関与していく必要がある。
図4 使用済製品からのネオジム磁石の回収・リサイクルシステム |
近年、CSR 活動等の一環として多くの企業や団体が、次代を担う子供たちの環境教育・3R 教育を支援する取組を行うようになりました(例:3Rに関する工場見学受入、出前講師の派遣、各種教材の提供・貸し出し、等)。
当センターでは、経済産業省の委託により、こうした事業者等による3R教育に関する取組の推進と、教育現場におけるそれら支援メニューの利用促進を目的に、以下の実態調査、及び推進ツールの作成を行いました。
(1)団体・事業者における3R教育に関する取組の実施状況調査
主要な団体・事業者を対象に、3R教育に関する取組の実施状況、取組内容、取組実施上の課題等についてアンケート調査を行いました。調査結果の概要は、以下のとおりです。
●3R教育に関する取組の実施状況
| 団体 | 事業者 |
行っている | 30.1% | 27.1% |
特に行っていない | 69.9% | 72.9% |
●取組の実施内容(複数回答可)
| 団体 | 事業者 |
3Rに関する工場見学受入、常設展示場等 | 27.3% | 57.4% |
3R講師の派遣、出前授業の実施等 | 36.4% | 33.9% |
インターネットによる情報提供 | 66.7% | 42.6% |
3R教育資料等の配布・提供 | 66.7% | 38.3% |
3R教材・物品等の貸し出し | 39.4% | 6.0% |
上記以外の取り組み | 66.7% | 43.2% |
※回答のあった団体・企業の具体的な取組内容は、別途、事例集に取りまとめています(6ページ参照)
●取組メニューの教育現場における活用状況
| 団体 | 事業者 |
活用されている | 43.8% | 32.7% |
あまり活用されていない | 65.6% | 67.3% |
●取組メニューを活用してもらう上でネックと考える事(複数回答可)
| 団体 | 事業者 |
どのような教材等をつくれば、先生方の役に立つのかわからない | 36.4% | 54.1% |
子供たちに3Rの知識を正しく、わかりやすく教えることが難しい | 9.1% | 46.6% |
学校・教育委員会等の教育関係者の理解を得るのが難しい | 13.6% | 19.5% |
その他 | 50.0% | 36.8% |
●取組メニューの活用を推進するために望む事項(複数回答可)
| 団体 | 事業者 |
3R講師のためのマニュアルが欲しい | 37.5% | 62.0% |
3R講師のための勉強会・講習会を開いて欲しい | 29.2% | 40.6% |
産業界と教育関係者の交流・意見交換の場が欲しい | 54.2% | 45.8% |
その他 | 29.2% | 25.5% |
(2)教育関係者における3R教育に関する取組の利用状況調査
学校の先生をはじめとする教育関係者を対象に、事業者等による3R 教育支援メニューの認知度、利用状況、評価、意見、要望等についてアンケート調査を行いました。調査結果の概要は、以下のとおりです。
●事業者等による3R教育に関する取組メニューの利用状況
頻繁に利用する | 4.5% |
時々利用する | 49.2% |
ほとんど利用しない | 30.3% |
全く利用しない | 16.7% |
●利用する取組メニューの内容(複数回答可)
3Rに関する工場見学受入、常設展示場等 | 63.9% |
3R講師の派遣、出前授業の実施等 | 38.9% |
インターネットによる情報提供 | 65.3% |
3R教育資料等の配布・提供 | 54.2% |
3R教材・物品等の貸し出し | 15.3% |
その他 | 6.9% |
●「ほとんど利用しない」、「全く利用しない」の理由(複数回答可)
どこの企業がどのようなツールやサービスを行っているのかわからない、情報が無い | 77.7% |
内容が難しい、あるいは不適切である(例:企業の宣伝が目的となっている) | 8.2% |
教科書や教育委員会の副読本だけで十分である | 3.3% |
カリキュラム上、それらのツールやサービスを利用する余裕が無い | 49.2% |
その他 | 27.9% |
●取組メニューの利用促進のために必要と考える事(複数回答可)
きちんとした内容の出前授業をするために、3R講師のマニュアルが必要 | 39.2% |
きちんとした内容の出前授業をするために、3R講師の勉強会・講習会が必要 | 24.0% |
教育関係者と産業界の交流・意見交換の場が必要 | 3.3% |
その他 | 19.2% |
(3)事業者等による3R教育に関する取組を推進するツールの作成
上記のアンケート調査の結果を踏まえ、事業者等による3R教育に関する取組を推進するツールとして、「団体・事業者による3R教育に関する取組事例集」、「3R講師マニュアル」等を作成し、関係者に広く配布しました。
なお、この取組事例集と講師マニュアルは、ご希望の方に無料(但し、送料は着払いでご負担下さい)で配布しております。詳細は8ページのお知らせをご覧下さい。
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