cjc | 9月号-6

製鉄所を活用した廃石膏ボードの再資源化のための収集・運搬システム構築計画
(日本自転車振興会補助事業)

 石膏ボードは優れた建築基礎資材として年間468万トン製造されており(2000年度)、その使用に際して端材などとして年間約37万トンの廃石膏ボード(新築系廃石膏ボード)が発生していると見積もられています。このうち、約40%(年間約16万トン)は製品メーカーにより引き取られ再資源化されていますが、残りの約60%(年間約21万トン)の多くは埋立処分されていると考えられています。
 さらに、建築物の解体などに伴い発生する廃石膏ボード(解体系廃石膏ボード)は、2002年度には91万トン発生しており、2010年度には176万トンに増加すると予想されていますが、現在のところそのほとんどが埋立処分されている現状にあります。
 このようなことから、平成15年度の調査研究の一環として、これら廃石膏ボードの再資源化に向けた検討を行いました。


(1)調査研究の概要
 解体系廃石膏ボードの利用先としては、セメントの凝固調整剤や土壌改良剤がありますが、いずれも受け入れ基準が厳しく(石膏のサイズ、紙の混入、水分)、受け入れ量も少ない状況にあります。
 一方、製鉄所の焼結工程において石灰の代替品として廃石膏ボードを使用する場合、その受け入れ基準が相当緩やかなため、収集・運搬システムが確立されれば、今後、大量に利用される可能性があります。
 そこで、西日本地域を対象として、製鉄所における焼結原料としての利用を前提とした廃石膏ボードの収集・運搬システムを構築するに当たっての課題(関係主体とその役割分担等)を整理しました。
 製鉄所における焼結工程のフロー図を示します。


製銑工程のプロセスフローの図
図1 製銑工程のプロセスフロー(出所:新日本製鐵(株))

(2)調査結果(西日本地域における廃石膏ボード回収・運搬システム素案)
 調査研究の結果は、廃石膏ボードのリサイクルに係る回収・運搬のためのシステム素案(図2)として整理されました。
(①案)  この案は、既存の中間処理業者機能を利用し、中間処理業者主体の管理団体を設立してシステムの調整及び石膏の品質保証を行う方式です。利点は既に石膏ボード処理・リサイクルの取り組みを行っている中間処理事業者を利用することができることで、それら事業者でネットワークを組むことができれば、比較的早期の立ち上げが望めると考えられます。リサイクル石膏の品質が最も懸念される事柄ですが、信頼のおける中間処理事業者が選定できれば、異物の除去、石膏サイズ、水分などの性状が安定すると思われます。逆に言えば、品質面で不安定な事業者は自然淘汰されると考えられます。
(②案)  この案は、製鉄所が直接ゼネコンなど大規模な排出事業者と処理の基本契約を結び、建設現場で分別回収された廃石膏ボードを中間処理業者を経由せずに搬入・リサイクルする方式です。この案は3案のうちでコストが最も低いという利点がありますが、収集できる場所が大手ゼネコンやハウスメーカーの現場に限定されるという問題点があり、回収量は①案に比べて劣ると考えられます。また、最大の問題は現場から直接搬入されることによる異物の混入の可能性であり、品質の担保をどのように行うかも課題となります。
(③案)  この案は、家電リサイクル法や、自動車リサイクル法におけるシステムなどでみられる排出者(ゼネコン、ハウスメーカー等)による管理会社を設立し、広域的な排出情報収集や廃石膏ボードのデリバリー管理、解体から中間処理、製鉄所での再利用の各段階における処理費用配分などを一元的に管理する方式です。
 広域収集を目的とした管理会社の設立は意味があると思われますが、排出者が設立するためには、現状の組織、地域、団体等を考慮しなければならず、可能性が低いと考えられます。

 結論として、当初は①案で出発するものの、将来的にはゼネコン、ハウスメーカー等の排出元が直接製鉄所と取引する時代が来るものと考えられます。その際には、本調査研究の②案のシステムが参考になるものと思われます。
廃石膏ボードのリサイクルに係る回収・運搬システム素案の図
図2 廃石膏ボードのリサイクルに係る回収・運搬システム素案




クリーン・ジャパン・ニュースレター [No.9] 6

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