cjc | 1月号-5

平成15年度調査研究成果報告(その2)のタイトル

 平成15年度に当センターで実施した調査研究の一部については前号でご報告したところですが、今号ではその2として残りの調査研究課題についてご報告します。なお、これらの成果報告書(一部のものについては概要のみについては、当センター内の環境情報リサイクルセンターで閲覧・入手することができます。

平成15年度 循環型製品・システム市場化開発調査(経済産業省委託事業)
 本開発調査は、リサイクル品または易リサイクル品の試作を行うとともに品質評価、社会受容性調査、さらには試作品等を用いた展示会による普及啓発の実施等を行うことにより廃棄物の用途開発・拡大を図り、リサイクル品または易リサイクル品の市場での流通を拡大させることを目的として実施したものである。

(1) 試作品の製造   リサイクル率が低い等、今後一層の3Rの推進が必要な廃棄物等を原料とした3R製品の試作や3Rしやすい製品の試作を行う。
(2)
 
品質等評価
(性能試験、安全性試験)
  廃棄物を利用した試作品の性能や安全性等の品質評価を行う。その際、リサイクルしやすい製品の試作品においてはリサイクルのしやすさを従来品と比較検討を行い評価する。
(3) 社会受容性調査   試作品について、製品の需要、品質、製造コスト等を総合的に評価し、社会受容性を検討するとともに、標準化の必要性及び可能性など、今後廃棄物の新規用途の開発・拡大等を進めていく上で必要な課題を整理する。
(4) 試作品の展示   試作品を展示会に出展することにより、広く需要拡大を図る。

平成15年7月より各テーマについて調査が開始され、平成16年3月まで鋭意実施された。これらの成果を下記の表に概説する。

テーマ 廃ガラス・陶磁器等無機系破棄物の破砕加工による粒子活用製品の試作
委託先 (株)環境保全サービス
試作品の製造 廃ガラス・陶磁器など8種類の無機系廃棄物の破砕試験及びその破砕物を100%使用したコンクリート二次製品の試作。
品質評価 特殊破砕機により破砕試験した破砕物の土木資材としての評価及びその破砕物を100%使用したコンクリート二次製品の評価。
社会的受容性 各種展示会(ウエステック、エコプロダクツ・住宅祭など)に無機系破棄物骨材を100%使用した製品を展示し社会受容性調査を実施した。製品の品質が従来と同等であれば普及が可能であることが判明した。

テーマ 家電リサイクル設備から排出されるポリウレタン樹脂の有償マテリアルリサイクル化の検討
委託先 東京エコリサイクル(株)
試作品の製造 家電リサイクル設備から排出されるフロンを脱気したポリウレタン樹脂を建設現場で使用する屋根下地材の断熱モルタル素材として再資源化するための試作品を製造して、適用性評価を行った。
品質評価 モルタル素材の適用性を確認するため、性能評価試験(機械的性質および熱伝導率)と作業環境性評価(モルタル練り、搬送および塗付け)を実施して屋根下地材の目標仕様レベルに達成していると判断した。
社会的受容性 モルタル素材の適用性を確認するため、性能評価試験(機械的性質および熱伝導率)と作業環境性評価(モルタル練り、搬送および塗付け)を実施して屋根下地材の目標仕様レベルに達成していると判断した。

テーマ 使用済硬質塩化ビニル管・継手の再生利用
委託先 (株)クボタ
試作品の製造 選別・清掃された使用済み硬質塩化ビニル管の粗粉砕材を、金型内で加熱融着させ、ポーラス状の板の試作を行った。更にその技術を発展させ箱型の雨水浸透ますを試作した。
品質評価 試作ますについて荷重試験ならびに透水性試験を行った。その結果、雨水浸透ますとしての性能を満たしており、十分実使用が期待できる結果が得られた。
社会的受容性 長期性能を満足し、既存製品に劣らない施工性と全体的な雨水対策にリンクしたシステムの中に組み込める製品の開発により、市場定着ならびに再資源化の拡大が期待できる。

テーマ 廃光ファイバーの再利用技術に関する調査
委託先 (社)電線総合技術センター
試作品の製造 廃棄された光ファイバケーブルを回収し、熱分解装置でプラスチック被覆を分解処理した後、光ファイバコアー(高純度石英ガラス)を取出し、脱炭、洗浄を行い溶融させてインゴット化した。
品質評価 脱泡の必要はあるが無色透明な物が得られた。
社会的受容性 現状の課題をクリアすることで市場価格に見合う再生材料を製造できる可能性が示された。

テーマ ブラウン管ガラスクズのリサイクル
委託先 (株)松下エコテクノロジー
試作品の製造 廃棄物扱いとなっているブラウン管のガラスクズを有価物にするため、ガラスクズに含まれる異物(アルミ蒸着膜、カーボン、鉄粉)を除去処理する要素技術を開発すると共に、ガラスクズに含まれるアルミ蒸着膜、カーボン、鉄粉を定量評価する評価技術を確立した。
品質評価 パネルビリガラスについては、鉄粉を除いた異物については限度見本と品質レベルが同等であることから、除鉄したもの6tonを少量実験と位置付けて溶解窯に戻し(0.2%混ぜ込み)問題のない事を確認した。今後、混ぜ込み量を増やした中量実験を行った上で導入を図って行く。
社会的受容性 ガラスクズは今後1600ton/年排出されると推測されるが、これらの原材料へのリサイクルが可能となる。また、今後排出されてくるPDP,LCDテレビのガラスのリサイクルに対しても参考となる技術開発である。

テーマ 木質廃棄物と植物由来のデンプン系バインダーとの混合による家具・装備品及び日用雑貨品等の押出・射出成型品の開発
委託先 ワタナベ工業(株)
試作品の製造 木粉・バインダー・水を主成分とする天然素材の原料を用いて、射出成形、押出成形により、小型の植木鉢と異型パイプよりなる室内インテリア用ラックを作成した。オール天然素材よりなる家具・装飾品および日用雑貨品としての商品化に向けて前進した。
品質評価 木質系の天然の外観、風合いがギフトショーでも注目された。密度、硬さ、強度、電気特性等の基本物性を測定し、プラスチックと比較すると優劣があるが、木材とは同等であることを確認した。寸法制度の向上および生分解性の評価は、これからの課題である。
社会的受容性 エコプロダクツ、ギフトショー等の展示会とホームセンターでの市場性調査を行った。従来には無いまったく新しい素材を用いた商品として関心、興味を持っていただいた。しかし試作段階でのコストが高く、市場に受け入れられるためには、50%以上のコストダウンが必要である。改善の目処はある。

テーマ 廃木材の加圧炭化法による自由成型リサイクル品の用途開発
委託先 (株)本吉建設
試作品の製造 粉砕した木粉(1~2mmの杉)を使用し、300℃前後に加熱圧縮をした炭化ボードを製造し、強度、吸水性、断熱性、吸音性の機能評価試験を行った。炭化ボードの形状も3タイプにして成型の自由化を推し量った。
品質評価 炭化ボードの強度は繊維板(MDF)と同等の機能性が現れ、吸水性も繊維板(MDF)と同様の結果が得られた。さらに断熱性においても市販されているポリエチレンフォームより炭化ボードの方が断熱効果があった。また、吸音性については低密度条件下で吸音効果が見られるが、高密度条件下ではさほどの吸音効果は見られなかった。
社会的受容性 有機系接着剤を使わない木くずのリサイクル品として炭化ボードは付加価値のある機能性があることがわかった。今後は機能性を生かして環境にやさしい製品として環境関連市場に大いに期待ができる。


太陽光発電システムのリユース事業システムの調査検討
(日本自転車振興会補助事業)

1. 調査研究の趣旨
 現在、国内では、太陽光発電システムを10年保証で販売している。ところが、太陽光発電技術研究組合の調査によると、システムの中核を成す「太陽電池モジュール」は、15年の暴露試験を終えた物でも定格を維持している事が確認されている。海外では20年保証で販売されると言われており、実際の寿命は40~50年を越えると考えられる。このため、設置家屋が寿命に達した後も、 さらに10年以上使用できる可能性が高い。
 2010年頃より、現状の設置家屋が寿命に達して太陽光発電システムが大量廃棄される時代が到来すると予想されており、この際太陽電池モジュールは、中古製品として経済的価値を保有しているので、リユース市場を形成する事が可能と考える。
 ただし中古製品の普及には、システムの保証・責任体制の検討を始めとするさまざまな課題が想定される。そこで、我が国の太陽光発電システムの健全な中古市場を構築するため、中古製品の回収、検査、販売、施工、保証に関するシステムについて調査研究を行った。
   
2. 調査方針
 今回の調査では、太陽光発電協会の「環境対応WG」のメンバーを筆頭に、業界の主要メーカーの方々、及び太陽光発電技術研究組合に参加して頂き、太陽光発電システムの既存の販売・施工・保証等の業態を調査した上で、これをベースとして類型化し、リユース事業システムを構築する上でクリアしなければならない課題点と対応策を整理した。
   
3. 中古太陽光発電システムの価格について
今回は、2010年頃の新品価格の7割を中古価格として仮に設定した。なお、ニューサンシャイン計画では、2010年時点の新品価格目標を30万円/kWとしている。これに基づいて中古価格を設定すると、一世帯当たり63万円/3kWとなる。(一般家庭用の太陽電池容量:3~4kW/戸)
上記の中古価格は、下記の手段により達成する必要がある。
 ・中古太陽電池モジュールの価格を2010年時点の新品価格の1/2程度に抑えること。
 ・パワーコンディショナー等付属機器は、太陽電池ほど寿命が長くないため、新品を使用すること。
 ・新築住宅を中心にユニット化して販売する事で、現地工事費を大幅削減すること。
 
4. 中古太陽電池の回収・検査・販売について
まず、ユーザーより使用済み太陽電池回収の依頼が、販売施工店にくる。販売施工店は、太陽電池を取り外し、査定を行って、買取費用をユーザーに支払う。この段階で、販売施工店は、太陽電池の買取費用に加え、取り外しや太陽電池回収後の運搬に要した費用を負担する事になる。
販売施工店は資本が小さいところが多いので、回収した太陽電池がすぐ捌けない限り、リユース事業の継続は難しい。また、その後検査、販売が控えているので、それを一業者だけで対応するのは難しいだろう。リユース業界に対して技術支援を行い、中古市場価格の適正管理を図るためにも「総合センター」的な存在が必要だと考える。
太陽電池は設置後十年の長期保証を設けるのが一般的なため、中古品の場合も、ある程度の年数を保証するよう求められる事が予想される。このため「総合センター」は、販売施工店より使用済み太陽電池を買い取った後、「使用年数」「設置条件」に応じて査定を行い、センター責任で保証する必要があると考える。
どこが母体となって「総合センター」を立ち上げるか未検討であるが、太陽光発電業界のコンセンサスを得る事は不可欠だと考える。「総合センター」を設立するとなると、事務所、倉庫、検査用の機材、人の雇用等の費用が新たに発生し、初期の固定費がかなり大きくなる。なるべく費用をかけずに運営する方法を検討する必要がある。
一方、住宅メーカーや大手メーカーの系列店が回収した場合は独自のノウハウを持っているので、回収・検査・保証・販売まで一貫して担当する事が可能だと考える。現行の社内システムを流用出来るように工夫すれば、リユース事業用に新たな人手や設備をかける必要が無いので、コスト的にも有利である。この場合、新品を主体に販売を進めつつ、価格が折り合わなかった場合の次善の選択として、中古太陽電池を持ち出すものとイメージする。


建設発生木材における循環型社会システムのあり方に関する調査研究
(日本自転車振興会補助事業)
 
 建設発生木材は、資源として大きな可能性を秘めているが、年間500万トンと言われる発生量のうち何らかの形で再利用されているものは約38%(再資源化等率)に過ぎない。この再資源化等率を向上させ、焼却、埋立といった最終処分量を最小化させることが循環型社会への道であるが、これを阻む要因は広範多岐にわたり、それらすべてを網羅し、その処方箋を提示することは一調査研究の範囲を超える。
 そこで、本調査研究では、製紙、木質ボード及びエタノールへの再利用並びに木質燃料としての再利用に焦点を絞り、その実態、問題点等について先進的な取組みを行っている企業に対するヒアリング調査を基本として整理することにより、再資源化の阻害要因及びその対応方策について検討を行うこととした。
 なお、本調査研究の実施に当たっては、当財団内に設置した「建設発生木材における循環型社会システムのあり方に関する調査研究検討委員会」(委員長:鈴木滋彦静岡大学農学部助教授)から多くの貴重な情報、ご意見、ご助言をいただいた。



建設発生木材における循環型社会システムのあり方に関する検討結果
 循環型社会の理念からは、マテリアル・リサイクルが優先されるべきであり、本調査研究においては、検討に当たり、図に示すようなカスケード型の再利用がなされるべきであるとの考え方に立つこととした。


図 建設発生木材のカスケード利用図(石橋委員の図を改変) (★部分は今回の主たる検討対象部分)


 今回の調査検討を通じて明らかになったことを、図の段階ごとに整理して示せば次のとおりである。

1.新築段階における課題
 新築段階においては、再資源化とともに廃棄物の排出抑制が重要である。大手の建設事業者やハウスメーカーにおいては、いずれの面においても既に先進的な取組みが行われていることが明らかとなった。
 一方、中小の建設事業者や地場の工務店については、これらに準じた取組みが行われているとの情報はあるものの、今回は調査対象としなかったため、その実態把握とともに今後の検討課題として残すこととなった。


2.解体・収集運搬段階における課題
 大手の建設事業者などにおいては自ら巡回収集システムを構築し、中間処理業者とグリーン協定を締結して、その適正処理・再資源化に先進的な取組みをしている例が見られ、また、解体事業者についても、優良事業者が着実に育成されていることが明らかとなった。
 一方で、適正費用の負担の問題など、ややもすると不適正処分や縮減という焼却処分に流れがちになる現実が明らかとなった。


3.分級・中間処理段階における課題
 建設発生木材を資源としてその価値を高め、より多く再資源化市場に流入させるためには、中間処理段階においてより精密な分級が行われることが極めて重要である。その意味で、再生材としての利用基準などを含めたより広範囲の「建設発生木材分級基準(仮称)」が定式化されることが望まれる。
 また、中間処理セクターでは十分な品質を有する資材を生産しているにもかかわらず、利用側でその事実が十分認識されていない現実がある。両者の意思疎通、連携強化のためのフォーラムが増加していくことが望まれる。


4.再資源化段階における課題
 我が国の再資源化市場は安定的な着地点を向かう過渡期の状態にあることが浮彫りとなった。将来的には一定の方向に落ち着いていくのであろうが、現時点では確たる方向性は見えていない。当面、これら市場全体を俯瞰し、循環型社会の形成に向けた市場となるようフォローアップしていくことが必要である。
 循環型社会の構築に向けては、マテリアル・リサイクルを基本とすべきである。サーマル・リサイクルの重要性を否定するものではないが、現在のようなサーマル・リサイクルのみに社会的なインセンティブが存在する状況は不均衡と考えられる。その意味で、マテリアル・リサイクルを促進するような施策(環境経済的/社会的規制)などについても検討がなされるべきである。


5.その他
 建設発生木材がその発生から再資源化に至るまで円滑に循環していくためには、その「入り」と「出」が量的に把握できるような統計データが整備されることが望ましい。




クリーン・ジャパン・ニュースレター [No.10] 5

| back | top | next |
 


Copyright (C) 2004 CJC All Rights Reserved.