スウェーデンのリサイクルのようす
レポーター: 高見幸子 さん (2014年執筆)
スウェーデンでは家庭から出るごみの99%が何らかの形でリサイクルまたはエネルギー源として利用されています(2013年)。
ごみを収集してもらうにはお金がかかります。住んでいる市によってかかるお金がちがいますが、2012年度の平均で一戸建ての家で一年間に2004クローナ、日本円で約3万円です。
ただし、生ごみを自分の家で肥料にすると、住んでいる市によってはごみの収集料金を3分の1や半分にしてくれます。
なお、よう器ほうそうのリサイクル料金は商品の価格に上乗せされています。1家庭で1年間に3,740円~6,800円はらっていることになります。
公園にあるすてきなデザインのごみ箱
ストックホルムのいたるところにある容器リサイクルステーション
町にあるすてきなデザインのごみ箱
住宅街
住民の素材別分別のための部屋
生ごみ回収容器
リユース(無料交換)のために洋服や家具を置く部屋
家庭から出すごみは次のように分別していきます。
1. 害のあるごみ
ペンキや溶剤や家庭菜園の農薬などは分別して、市の素材別分別した粗大ごみ等を扱うリサイクルステーションか、ガソリンスタンドの横などに設置された環境ステーションに持っていきます。最近は、自治体が有害ごみの回収の日を決めて住宅街に回収に回るなど、有害ごみの回収率を高めようとしています。
2. デポジット制のよう器
スーパーに持っていくとあずかり金が返ってきます。
また、中身が消費されたデポジット制のよう器のうち、回収されたものの割合は次のとおりです(2013年)。
デポジット制のよう器 |
回収の割合 |
アルミ缶 |
90% |
ペットボトル(小) 0.25リットル (大) 3リットル |
73% 92%
|
ガラスびん 330 ml 500 ml |
98% 85%
|
スーパーにあるデポジット制容器の回収機
デポジット制容器を投入しているところ(アルミ缶)
3. デポジットがない輸入ワインのびんやガラスのよう器
デポジット(あずかり金)のない輸入ワインのびんなどは市のリサイクルセンターに持っていきます。
- 色のついていない透明なガラスびん
- 緑など色のついたガラスびん
これらのびんのリサイクルされる割合いは89%です。
多くは新しいガラスびんになります。その他はガラスファイバーに利用します。
輸入ワインびん
4. 新聞とざっし
新聞を読む人が減ってきたことが理由で、全国の統計が取れていないためリサイクル率が分かりませんが、これらは6回は再生紙として使えます。その後は、焼きゃく場で熱として利用します。
5. 紙よう器
ダンボールや牛乳パックなどは77.2%がリサイクルされています。これらは8回はリサイクルして使えます。その後は焼きゃくしてエネルギーにします。
6. プラスチックよう器
2013年では原料へのリサイクル率は36.7%でした。
ごみ袋や買いもの袋、かたいプラスチックよう器は騒音を防ぐさくや肥料のよう器などにリサイクルされています。
7. 金ぞくよう器(デポジットできるアルミ缶以外)
缶詰の缶などスチールよう器は73.2%がリサイクルされています。
スチールよう器は、缶詰の缶、エンジンの部品などに利用されています。
8. 古着
発展途上国を助ける団体に寄付します。それを古着屋で売ったお金で発展途上国を助けます。
最近は、古着の回収率を上げるために、大手の洋服小売りチェーン店が、お店で買った服でなくてもお客さんが着なくなった服を持ってくると、そのお店で使える引き換えクーポンを渡すようにしています。そして、できるだけリサイクルをしようとしています。
9. 粗大ごみ
冷ぞう庫は市のリサイクルセンターに持っていけば無料で引き取ってくれます。
フロンは市町村が回収しなければいけない決まりになっています。
テレビなどの電気製品、家具などはインターネットなどを通して売ることができます。また、古道具屋に買ってもらうこともできますがひどくこわれている場合は市のリサイクルセンターに持ちこみます。
10. スウェーデンにおけるごみ処理のあらまし(2013年)
◆ 一年間一人あたりのごみの発生量 461.2 キログラム
◆ ごみの処理
- 50.3% 燃やして熱をリサイクル(地いき暖房の熱と発電に利用)
- 33% リサイクル(原料にする)
- 16% 肥料にする+バイオガスを生産する
- 0.7% うめ立て
注釈 ごみ: 家庭・会社・商店から出される台所のごみ、粗大ごみ、紙のごみ
◆ リサイクル
よう器(金ぞく、紙、プラスチック、ガラス)、紙、タイヤ、電気電子器具、自動車の生産者と輸入元は、使い終わった後のものを回しゅうしてリサイクルする責任があります。
◆ 「肥料にする」「バイオガスを生産する」
スウェーデンでは、庭のある家庭では、生ごみをコンポスト*1にして、自宅で栽培する野菜や花などの肥料として使う家庭が一般的です。アパートでも住民たちが共同でコンポストをしてアパートの敷地の庭の花の肥料にしたりしています。市民の家庭の庭の手入れで出てくる草や枝等は、市が広い場所でコンポストにして、肥料として使っています。
近年、コンポストだけでなく、生ごみをバイオガス*2にする市が増えています。市は、生ごみを出す家庭には、ごみの収集料金を安くするようにして回収率を増やすようにしています。そして、回収した生ごみを大きな発酵タンクで発酵させバイオガスを発生させるのです。そうすると、生ごみをエネルギーとして活用できるメリットがあります。
スウェーデンでは、バイオガスを家庭からの生ごみだけでなく、食品メーカーなどからの生ごみ、下水処理場の汚泥からも生産しています。バイオガスの31%が暖房に使われて、54%が市バスやタクシーなどの燃料として使われています。
たとえばストックホルム市では181台の市バスがバイオガスで走っています。
バイオガスは、市バスに使われる全燃料の12.7%を占めています(2013年)。
なお、市バスにはバイオガスの他に植物から作った燃料が主に使われています(メタノール40%、バイオディーゼル31%。2013年)。
ストックホルム市内をバイオガスで走るバス
*1 コンポスト: 生ごみなどを微生物により分解して作る堆肥。
*2 バイオガス: 生ごみなどを発酵させてできたガス。このガスから二酸化炭素などを取りのぞくと、燃料として利用できます。主な成分はメタンガス。なお、メタンガスは広く燃料として使用されている天然ガスの主成分です。
バイオガスの生産
◆ 焼きゃく
ごみの発生量のうち約50%が全国に30ある焼きゃく場でもやされています。
ごみ焼きゃく場から生まれるエネルギーは、地いきの暖房のためのお湯をわかすためと発電に使われています。
具体的には、スウェーデン全体の地いき暖房用熱エネルギーの20%を送り出し、また、25万人の家庭の1年間に必要な電気を生産しています。
◆ うめ立て
スウェーデンでは2008年にきびしい規制ができ、市のうめ立ての半分以上が閉められました。
2013年には、家庭ごみを受け入れるうめ立て地は、全国で47カ所になりました。
きびしい規制ができたと同時に、ごみのリサイクル率が高くなったため、市のごみ処理場でのうめ立ての作業は、非常に少なくなったのです。
うめ立て地の大きな環境問題は、うめ立て地から流れ出る水です。また、うめ立て地から出るメタンガスは回収し、地いき暖房の熱エネルギーとして利用しています。メタンガスは空気の中に出ると地球温暖化ガスになるので、このように環境のためにうまく生かす必要があります。
◆ 有害ごみ処理施設
スウェーデンには害のあるごみを処理するしせつが1カ所あります。市民が分別して市の環境センターに持ちこんだ害のあるごみや産業のために出された害のあるごみが、このしせつに送られてきます。ここで環境のことを考えた方法で処理されます。たとえば、回しゅうされたフロンやPCBなどの害のあるものは、焼きゃく炉で処理されます。水銀は、地下深くに保存されています。