| 1. 調査研究の目的 | |
リサイクルは、化石エネルギー資源や鉱物資源など天然資源の消費を抑制して温室効果ガスの排出を低減し、低炭素化社会の構築に寄与する有力な手段です。しかし、リサイクルを行った結果、温室効果ガスの削減、即ち、低炭素化にどれだけ貢献するのか実施者に見えないことが多く、温室効果ガス排出抑制・低炭素化社会の形成の側面からリサイクルを推進するというインセンティブが働きにくい状況にあります。このような状況を解消し、従来の資源の有効利用に加えて低炭素化社会形成の促進の観点からもリサイクルの推進を図るために、リサイクルによる温室効果ガス排出抑制効果及び今後のリサイクルの進展により期待できる温室効果ガスの排出抑制効果をLCA手法に準拠して調査研究しました。
| 2. 調査研究結果(概要) | |
(1) 対象製品
アルミニウム、銅(電気銅・伸銅品)、鉄鋼、紙、プラスチック、ガラスびん、セメント
(2) リサイクルによる温室効果ガス排出抑制効果の考え方
「再生資源を原材料として生産された製品(再生資源製品)」は、同種の「天然資源を原材料として生産される製品(天然資源製品)」の生産を回避し、代替しています。代替量は、「再生資源を原材料として生産された製品」の生産量に代替率を乗じることにより求められます(図1)。代替率は、金属・ガラスびん・紙は1、プラスチックは0.3~1程度です。
このように考えるとリサイクルによる温室効果ガス排出抑制効果(GHGr)は、式(1)又は式(2)で求めらます。
GHGr=Rp(s×En-Er) (1)
GHGr=Ri×Yr(s×En-Er) (2)
ただし、GHGr:リサイクルによる温室効果ガス排出抑制効果
その他:図1参照
(3)リサイクルによる温室効果ガス排出抑制効果の試算結果(アルミニウムの事例)
①効果算出モデル
輸入新地金(天然資源製品)の温室効果ガス排出量と再生地金(再生資源製品)の温室効果ガス排出量の差をリサイクルによる温室効果ガス排出抑制効果と考えました(図2)。
②使用データ
新地金のLCI(En:天然資源工程温室効果ガス原単位):
日本アルミニウム協会「アルミニウム新地金および展伸材用再生地金のLCI データの概要」(2005 年3 月23 日)に基づいて、LCIデータを整理しました(表1)。
再生地金のLCI(Er:再生資源工程温室効果ガス原単位):
再生地金のLCIは公開されていないので、日本アルミニウム協会LCA 調査委員会「スクラップ溶解のインベントリ調査報告書」(2007年9月)のLCIが再生地金のLCIを代表すると考え、データを整理しました(表1)。
アルミニウムのリサイクル量(Ri:再生資源投入量):
1,329千t(2008年)。この数字はJOGMEC「アルミニウムのマテリアルフロー(2008年)」から引用しました。
■表1 製品1kg当たりのLCI データ
| 再生資源工程 (製品:再生地金) | 天然資源工程 (製品:輸入新地金) |
資源投入量 | Ri: アルミニウムスクラップ 1.039 kg-Sc | Ni: ボーキサイト 5.168 kg |
製品量 | 1kg | 1kg |
歩留 | Yr: 0.96 kg-Al/kg-Sc | - |
温室効果ガス (CO2)排出原単位 | Er: 0.287 kg-CO2/kg-Al | En: 9.218 kg-CO2/kg-Al |
注釈) Sc:アルミニウムスクラップを意味する。
Al :アルミニウム地金を意味する。
③アルミニウムスクラップのリサイクルによるCO2排出削減効果の試算結果
式(2)に、スクラップリサイクル量(2008 年)及び表1 の各値を代入することで求めることができます。s =1です。
GHGr=Ri×Yr(s×En-Er)
=1,329 千t-Sc /年 × 0.96 kg-Al/kg-Sc ×(9.218-0.287)kg-CO2/kg-Al
=11,395 千t-CO2/年 (2008年)
※アルミニウムスクラップの収集・運搬、前処理に伴う二酸化炭素増加は考慮していない。
■ 図1 再生資源製品による天然資源製品の代替の概念
■ 図2 アルミニウムのライフサイクルフロー(モデル)
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